帰途

 郡山のジュンクさんは昨夏にも訪れた。いわゆる震災関連書、いわゆる原発関連書が出るたびに、このお店で何をどう陳列しておられるのか、がそこはかとなく気にかかっていた。じっくりと拝見する。ヤマニ書房さんで得たのとはまた違った刺激を受ける。

 
 ジュンクさんの入る百貨店を出てから、さてどうしようと思案。少し離れたリブロさんにも足を延ばすことにする。地元のFM放送らしき音声が通りに流れている。地名と数値を読みあげている声が聞こえてくる。ほどなくして声はリスナーからのメールに切り替わる。告白がどうこうというのが今日のテーマらしい。そうか、バレンタインデーの前日か。


 月曜のお昼前、車は多いが人通りはさほど多くない。途中通りがかった公園ではお年寄りが何人かベンチで談笑している。それなりに寒いけれど、日差しがあるのでずいぶんとしのぎやすい。遠くの方に見える山並みがきれいだ。


 リブロさんの棚を拝見した後、もときた道を引き返す。平日日中のこととて、どこもさして人が多いわけではない。車は多そうだ。「以前」を知らない以上、あれこれ考えるのも失礼というものだろう。ふと、「釜ヶ崎が人権問題の『名所』になっている」(生田武志さん、『フリーター論争2.0』、P.142)との言葉を、再び思い起こす。

 
 自分が日々働き、暮している場所からほかのところに出かけて見聞きし、考えたことは、自分が日々働き、暮している場所で結び付けられなければならない。そのままの形で結びつけるのが難しければ、ばらして再構築してみよう。それは最低限の倫理であるように思える。それこそ、杉田さんのいう「デフォルト」であるかもしれない。最低限ではあるが、ハードルは高い。考えよ。


 とはいえ、やっぱり腹は減る。ぱっと見かけたお店に入り、頼んだものが出てくるまで待つ。携帯でtwitterをいじくると、武藤類子さんがネットのテレビか何かにご出演だったようだ。その感想やら反響やらがちらちらと目に入る。『福島からあなたへ』では「電通の消費を促す十カ条」(P.52)と表記されている部分へのリアクションが大きいようだ。はて、そういえば都留重人さんもどこかで言及しておられたな、あれはどこだったか……と思いだそうとしているとお膳が運ばれてくる。まあいいや、帰ってから調べよう、と食欲を優先する。


 食事をおえ、さあ、いよいよ帰るだけだとなったのだが、なんとなく気持ちがだらだらしている。腹いっぱいのせいだということにして、腹ごなしがてら駅ビルをうろうろする。そうだ、くまざわ書店さんがあるではないか。こちらもまた、いわゆる震災関連書を集められたコーナーを中心に拝見する。場所が変われば顧客も変わり、大きくいって同じ商圏であっても、書店の品ぞろえは随分と変わる。普段身にしみていることだが、ジュンクさん、リブロさん、くまざわさん、それぞれにおける顧客と書店員のニーズと提案のキャッチボールの様子を改めて想像しなおし、新幹線のきっぷ売場に向かった。


 帰りの新幹線は、団体客に遭遇してずいぶんと騒々しい。そこそこの混み具合でもある。とはいえ、乗っている時間は1時間程度。車窓を眺めている間に着くだろう。わりあいにこの道中の景色は好きだ。


 結局自分は何をしにきたのだろう。書店見学は確かにしたし、勉強にもなった。それは仕事で形にしていくことが出来る。だが、仕事を離れて、それこそ個人(「市民」というにはためらいがある)としては? 

 何かを見た気になるな、ということくらいは心得ているが、しかし、「何しに来たの?」と誰かから聞かれたならば、飛び上がって逃げ出しただろう。劇場版パトレイバー2における荒川のことなどが、不思議と思い起こされる。そのイメージはやがて中島みゆきさんの「吹雪」へと繋がっていく。


 他人を手段としてではなく目的として云々、というのはカントの言葉であったか。批評家の文章を通じてしばしば目にしたことを思い出す。意味がさっぱり判らない。だんだん眠くなってくる。とにかく、帰ったら本棚をひっくり返さねば……。
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by todoroki-tetsu | 2012-02-20 13:17 | Comments(0)

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