日記その3

5.田んぼを見る
 最初目的としたのは、市の中心より少し南に行ったところ。ほとんどあてずっぽうだが、ある程度田んぼがありそうな地域を目指し、そこが今どうなっているのかを見ようと思ったのだ。鹿島で見かけた光景のことも頭のどこかにあったのだろう。

 地図で見るとバス停はあるが、実際にバス停の時刻表を見てみると案の定、バスは1日に数回であった。初めから歩く覚悟はしていた。時計は9:00をやや回ったところ。

 昔ながらの書店が一軒あいている。雑誌とコミックでほとんど埋められたその書棚の奥に、何か作業をしている年配の女性が一人。

 町中を歩き、郊外へと伸びる一本道へ差しかかる。進んで行くたびに人家もまばらになっていく。さきほどの書店以外にもいくつかの商店や理髪店などはあいているが、とにかく町を歩いている人をほとんど見かけない。たまに年配の人を見かける。車はよく通るのだが。震災の影響かどうかは知らない。
 
 何の変哲もない、といえば色々な意味で失礼かもしれない。が、決して悪い意味で言うのではない。小さい時分に遊びまわった田舎の光景のことがどことなく思い起こされ、どんどん強くなってくる日差しと蝉の声で、小学生の夏休みにちょっとタイムスリップしたような感じがした。

 野馬追祭が近づいているらしい。そうか、ここが会場になるのか、と横目で眺めながらまだ進んでいく。コンビニとガソリンスタンドが構える十字路を越えて、さらに小高い丘のようなところを登って少し降りると、一面に田んぼらしき光景が広がっている。

 が、道沿いの田んぼを見て行くと、田植えがされているのではなかった。生えているのは雑草である。地肌がモロになっているところもあった。遠く離れたところで、芝刈り機の音が聞こえる。「野菜直売所」と書かれた小屋状のところには何もなかった。時間は10:30を過ぎている。持っていた水を飲みきってしまったので自販機で何か買おうと思ったのだが、機械は動いていなかった。

 視界に入った範囲だけのことであるし、当然農業の知識などまったく持ち合わせていないので、何がどうなっているのかは判らない。でも、もし、仮に例年は水を入れ稲を植えていた場所であったならば……。

 一見牧歌的に見える、ありふれた田舎。何の縁もゆかりもないよそ者が、パッと見る限りは何の変哲もないこれらの景色。彼女がこの光景を目にしていたのかは知らない。僕から見れば何のことはないけれども、見る人が見ればそこには絶望しか見いだせない、そんな光景が存在している。まず、そのことを出来る限り覚えておこう。そしてたぶんそれは、自分の職場でも在り得ることだ。
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by todoroki-tetsu | 2011-07-16 16:11 | Comments(0)

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