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就職内定率

 大学生の10/1現在の就職内定率が、57.6%であるという。この数字がどういうことなのか。大変だろうなとはもちろん思う。でも、その大変さはどういうものだろう。自分が就職活動をしていた98年の数字と比較してみる。当時も氷河期と言われてはいたのだが……と思って調べてみると、73.6%だった。


 就職内定率、というのが少しまだピンとこないのだが――学生時代にはよく「(有効)求人倍率」といったような言葉を耳にしていた気がする――、しかし、この数字だけ見る限り、「俺の時よりも相当に大変だぞ」という気がしてくる。

 
 98年に就職活動をやっていたということは99年4月から働き始めたということなのだけれど、この時は就職協定が廃止されてまだ2年目だった。就職協定のことを学生アルバイトさんに話すとみな一様に、驚く。就職活動は大学4年の春(5/1だったか?)からだったし、秋(11/1)には終わった。実際はどうか知らないが、一応そうなっていたのだ。


 協定廃止2年目の僕の頃は、たしか早いところで99年新卒対象の一次試験や説明会などが98年の3月くらいにあったんじゃなかったかな、と記憶する。間違っているかもしれない。が、少なくとも4月は説明会だの何だので忙しかったのは間違いない。おかげで新年度最初のゼミに我々上級生(僕は5年生だった……)が皆出られず、ゼミ新入生であるところの3年生を迎える大事な時になんだ! と先生にお叱りを頂いたことを覚えている。早い連中は6月になる前か、なってすぐくらいにもう内定が出ていたのではないか。

 
 僕は7月の半ばくらいに内定が出た。遅いほうであった、仲間内の男子学生の中では。それまで別段思ってもいなかったが、人間不安になると考えがすさむ。「俺は1年留年したとはいえそこそこの学校なのに」(!)とか、「なんで男なのに決まらないんだ」(!)とか、そういうことを考えたりして、またそうしたことを考える自分が嫌になるという自家中毒に陥ったりもして。そのくせ、自分が内定を取ったあとに出かけた時、まだリクルートスーツで歩いている女子学生を見て「大変だな」と思ったことを覚えている。自分がリクルートスーツを着ていた時には目に入らなかったのだが。多分、自分は自分の身を守るためなら何でもやるタイプなんだろうな、と思った。だからそんな目に合わないような平和な世の中がいいな、と身勝手なことを思ったし、今でもそう思っている節がある。


 もうひとつ嫌だったこと。PHSを持っていたのだが、交通費がかさみにかさんで、手放した。つまり、電話は部屋の固定しかない。面接までいった会社がいくつかあったのだが、その結果は電話で来る。部屋にいても落ち着かない。電話が鳴った、と思ったら、院進学に向け勉強中の知人からだった。「○○君は内定出たらしいけど、どうなの」、と。知人は何も僕を焦らせようとしたのではない。本気で心配してくれていた。しかし、僕にはそれを受け止めるだけの余裕はなかった。「どんどん先を越されている……」という思いが先行した。かといって、ここでキレたらそれこそ人としておしまいだろう、でも……となんだか訳が分からなくなって、電話が終わった後もどよんとした気持ちになった。人を信用できない自分が嫌だったのかもしれない。


 自分というものを基本的には信用していないのはこのあたりでの経験によるように思う。


 うちの店にも学生アルバイトさんはいっぱいいて、なんだか先輩面して「頑張れよ」みたいなことを思ったりもするが、口にはなるべくしないようにしているし、極力就職活動そのものの話題には触れないようにしている。下手なことを言って余計に苦しい思いはさせたくないから。


 就職活動がどうあるべきか、なんてことは申し訳ないが僕には分からない。が、自分の経験を「今となってはいい思い出だ」とは10年たった今でもまだ思えないのだ。恥ずかしい話だが、いまだに何ヶ月かにいっぺんは「就職先がない、どうしよう」と夢で見てうろたえて目が覚めるのだ。


 自分自身への警戒心を忘れない、という意味では確かによい経験ではあったけれども、それはあくまで僕個人のものであって、他者がそうであるとは決して言えない性質のものだ。


 どんなことにも、それをそれなりに乗り越えられる人はいるし、乗り越えられない人もいる。せめて、いろんな道ややり方があればいいのにとも思うのだが。

by todoroki-tetsu | 2010-11-17 22:17 | 業界

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