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伊丹万作「戦争責任者の問題」其の九

進める前に、さかのぼる。どうしても読み返してみたくなった箇所。

いったい誰がだまして、誰がだまされたのか。「日本人全体が夢中になつて互にだましたりだまされたりしていたのだろうと思う」と述べたあと、ややあってこんな文章がある。


少なくとも戦争の期間をつうじて、だれが一番直接に、そして連続的に我々を圧迫しつづけたか、苦しめつづけたかということを考えるとき、だれの記憶にも直ぐに蘇つてくるのは、直ぐ近所の小商人の顔であり、隣組長や町会長の顔であり、あるいは郊外の百姓の顔であり、あるいは区役所や郵便局や交通機関や配給機関などの小役人や雇員や労働者であり、あるいは学校の先生であり、といつたように、我々が日常的な生活を営むうえにおいていやでも接触しなければならない、あらゆる身近な人々であつたということはいつたい何を意味するのであろうか。

そんな状態に国民が追い込まれてしまったからだ、と万作は言う。しかし、と続けるのだが、そのあたりは「其の四」「其の五」にゆずる。追い込まれた末のだましあい。そんな状況であっても、だましもせず、だまされもせぬように生き延びていくことは出来ないか。万作が記した「自己反省」という言葉を読むとき、政治か文学かという根源的な問いに直面していることを忘れてはなるまい。


「滅びるね」ーー広田先生の言葉が残響する。




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by todoroki-tetsu | 2015-02-03 00:39 | 批評系 | Comments(0)

今日の3点

 べつにどうということはない。文学音痴の僕に、たまたま今日出来事が重なっただけ。

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 漱石の『明暗』、ついに通読を果たす。他の作品はおおよそ最低でも一読はしていたのだが、こればっかりは最初に手に取った高校の時の記憶があまりに重すぎて躊躇していた。


 頁をめくるたびにグサグサと胸を抉られる。なんだろうこの感覚は。カネだの見栄だのの話のえぐさがグイグイきて、手にとって4日くらいで読んでしまった。


 『道草』でも感じたが、漱石の描く女性心理というのは、女性から見ると(という言い方も大くくりすぎてダメだと思うのだが、他にうまい表現が見当たらない)どんな風に映るのだろう? 何か機会があれば話を聞くなり読んでみるなりしてみたい。



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 中野重治の『甲乙丙丁』。やっと見つけた。さして熱心に探しているというわけでもなかったが、この一年くらい、ふらっと古本屋に立ち寄る時には気にかけていた。たまたま通りがかった池袋西口の古本市で入手。楽しみだ。



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 ようやく出たか、と棚に並んでいるのを早速購入。大澤信亮さんの『神的批評』。収録作品はだいたい読んでいるつもりではあるし、「柄谷行人論」はtwitter読書もやってみたりもしたのだった。

 
 しかし、購入して早速「宮沢賢治の暴力」を読み、あらためてその「破壊力」に圧倒される。単行本になったら一気読みしてみよう、と思ったのだが、到底無理だ。いや、それでいいのだろう。



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 装丁はシンプルだ。上記はカバーを外した状態。本屋から見ると新潮社さんというのは実に手ごわい出版社さんであるが、こうした造りはさすがだと思う。


 読者としてだけでなく書店員としても「対峙セヨ」と迫られる。写真には写せていないが、帯の背の部分には「問いを生きることはできるか」と朱で染め抜かれている。


 書き手に対して恥ずかいことはしたくない。それが何なのかは分からないけれど。まずはとにかくもがいてみるか。
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by todoroki-tetsu | 2010-10-27 22:16 | 文学系 | Comments(0)