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「書店」を論ずることに関する走り書き

特定の本をどう置くかあるいは置かないか、そうした「目に見えること」を成り立たせているなにものかを考えたいが、あまり時間はない。走り書きたるゆえんである。

一日の労働時間を考えてみる。人と職場によって違うだろうが、営業時間にかかわらず、僕の場合は売場を担当する場合には14時間労働がメインである。休憩時間は規程上1時間15分だが、実際には当然そんなことはない。週に1回は1時間とれる日がある。ゼロが2日ほど、あとは20~30分くらい。さて、この中でなにがどうできるだろう?

休憩時間をつぶして何をしているか。店出しに追われるならまだよいが、カウンターに追われていると何もできない。それが接客業ではあるのだが、店出しは合間合間の仕事になる。どの本をどの本の隣に置くか、考えている暇はない。とにかくさばく。棚づくり。そんな言葉もあったなとたまに思い出す程度。

発注は自動発注システムに任せる。売れ筋は頼まなきゃ入らないが、頼んだところで減数されるばかり。それでも最低限はとあの手この手でやりくりする。逆を言えば、そうしたことに専念するために自動発注システムがある。いきおいシステム頼み、取次頼みになっていく。

事前に新刊発注ができる(時間的にも力関係的にも)書店がどの程度あるのか知らない。本部的なところがすべての権限を有している場合もあるだろうから何とも言えぬが、現場任せになっているとして、さて実際どの程度できるか。毎日100枚はファックスがくる。返しているのは一日平均すると10枚程度。多いのか少ないのか知らないが、かなり返しているほうだとは思う。システム頼み、取次頼みを少し脱しようとしてできるのはせいぜいこんなところ。

判断のできる人間はいきおい人件費が高くなる。なので、要らない。自分も含めて。決まったことを決まったとおりにやれるスタッフさえ用意していればいい。採算を考えると、そうなる。自分たちの色を出そうとして時間と手間をかけて、採算をとれる書店とそうでない書店は、確かにある。

書店員の仕事。とにかく新刊を早く出すこと。売れ筋は早く出すこと。これはどんな書店員でも棚を持てば最初に叩き込まれることのひとつのはず。そこに内容に応じてどうこうなどと教える/教わることがどれほどあるか知らない。僕は教わらなかったし、教えない。売れるか売れないかだけ。内容を判断するのは顧客である。我々の仕事はとにかく早く出すこと。それである日突然「お前のところはこんな本を置いているのか」「こんな本も置いていないのか」と言われても困惑するのみである。

「こんな本も置いていないのか」のほうがやりやすい。完全買い切りでなければ置けばいいだけだ。「こんな本を置いているのか」と言われても困惑するのみ。そう言えば、ここまであれこれ騒ぎになる前に、いわゆる新左翼系の雑誌のライターを名乗る人から一方的に取材をねじ込まれてあれこれ書かれたこともあった。なんともいえぬ苦い思いが積み重なると、書店員の感覚は鈍化していく。誰が味方で誰が敵か。見たいものしか見ない、とうそぶいてみるのはたやすいが、それを自分に折り返してさあどうなるか。

ある出版社の企画会議にて。震災から1年が経とうかというころ、いわゆる震災本のラッシュについて、苦言を呈した書店がいくつか。僕もその一人だが、ある書店員は「出版されるということは書き手がいて、読み手がいることを想定して版元さんが作ってくれたはず。たくさん出すぎて困るなどとは私はいえない」と。書店員の模範解答である。揶揄する気で言うのではない。しかし、これが模範解答だとすれば、どうか。何が見えてくる?











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by todoroki-tetsu | 2014-11-01 00:15 | 業界 | Comments(0)