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いちむらみさこさん

 2/10(火)「毎日」夕刊9面、「憂楽帳」なる小さなコラムにいちむらみさこさんの名前を見つける。

 「働く女性の全国センター」の総会で、「働くのが怖い。働かないっていうのもあっていいんじゃないか」といちむらさんが発言、これをめぐって賛否両論あったというところから働くことの意味について投げかける。

 記者は山崎友記子さん。本当に短いコラムだが、いちむらさんのラディカルさ――根元的という意味での――と、その意味を非常によく表している。「貧困」と「労働」に関する「毎日」の記事の奥深さはこの間とみに感じられるところではあるが、流石と思う。

 いちむらさんの名前を最初に拝見したのは確か「オルタ 2008年7・8月号」で、比較的最近といえば最近である。それから『Dearキクチさん、 ― ブル-テント村とチョコレ-ト』にたどりついたのだが、『ロスジェネVOL.2』にいちむらさんが寄せられた路上エッセー、「殺す市民、カレーライスでつながり生き返れ!」で僕は衝撃を受けた。暴力をここまで見据えているのか、と。

 その目で、『Dearキクチさん、 ― ブル-テント村とチョコレ-ト』を読み返すと、最初に読んだ時とはまた違った印象を受ける。ごく普通に「読み物」として読めるし、いちむらさんの筆致はあたたかでかつ、毅然としているので読み心地がいい。しかし、それだけではない読み方が色々と出来る、奥深い一冊であると認識した。

 いまのところ単著としてはこの一冊だけの様子。次にどんな言葉を発するのか、期待しながらしっかりと売っていきたい。
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by todoroki-tetsu | 2009-02-12 10:19 | 批評系 | Comments(2)

「週刊ダイヤモンド」&「週刊東洋経済」(いずれも2009年2/7号)

 次号発売前夜に記すのもなんだが、2/2発売の「週刊ダイヤモンド」&「週刊東洋経済」はじつに面白かった。

 「週刊ダイヤモンド」は「ハケン共存かVS正社員対立か」、「週刊東洋経済」は「雇用壊滅!」といずれもこの間の雇用・貧困問題について特集を組んでいる。

 この号に限らずだが、「週刊ダイヤモンド」は湯浅誠さんや雨宮処凛さん、赤木智弘さんといった論客を集めていて、多彩さで軍配があがる。「ダイヤ」にこうした方々が出る、ということの社会的な意義は決して小さくないと思う。原稿料事情を僕は全く知らないが、こういうメジャーどころで少しでもちゃんと稼いで頂けるといいなあ、などとも考える。まあ、そのためには現場でちゃんとお客様に買って頂けるようにアピールしなきゃいけないのだが。

 かわって「週刊東洋経済」。取材力の強さ、目配りの幅広さと深さを感じる。「ハウジングプア」という表現を前面に出し、母子生活支援施設にまで踏み込んでいるあたりは『フリーターズフリーVOL.2』での極めて高度な到達を髣髴とさせる。また、派遣村での湯浅さんと連合高木会長との対面のクローズアップの仕方など、かゆい所に手が届くというか、実に行き届いていて、読んでいて何度も唸った。

 特集作成チームの筆頭に、『雇用融解』の風間直樹さんのお名前を拝見し、なるほどと得心した。もちろん集団作業の賜物であることは間違いないわけだが、いや、素晴らしい特集だと思う。

 バックナンバーは取り揃えていなくても、すぐ前の号は置いている書店はわりあいにあるので、お見逃しの方はぜひ。
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by todoroki-tetsu | 2009-02-09 00:23 | 業界 | Comments(3)

年表の迫力。『戦後日本スタディーズ③』

 今どき講座ものでもあるまいし、という感が率直なところないでもない。全三巻だという。まあ、確かに資料的価値はあるのだろうな、と思いつつ、しかし編者が多すぎてちょっと不安。こうしたことは編者が少ない方がスムーズにいくのではないかな、などといらぬ心配をしてしまう。『戦後日本スタディーズ』である。

 「80・90年代」の第三巻から「70・60年代」「50・40年代」へとさかのぼっていくのだそうだ。こうした戦後史の試みそのものは嫌いではない。『「豊かな社会」日本の構造』を学生時代に紐解いたはしくれとして、やはり戦後日本というものがいったい何なのか、という問いかけなしには現在が見えてこないという認識は、ある。どんな風にさかのぼっていくのか、大変に興味深い。

 「80・90年代」に収められた論考の中で面白かったのは辻井喬さんへのインタビューである(上野千鶴子さんと小森陽一さんによる)。吉本隆明さんもしばしば辻井さんに言及しておられたけれども、やはりこの人は面白い。

 だが、なんといってもすごいのは年表である。巻末にこの20年の年表が収められているのだが、38ページにもわたる大部なもの。「政治・経済」「社会運動」「生活・思想・文化」の三分野に分かれているのだが、この充実ぶりは何物にも代えがたい。これだけで¥2,520円のモトは取れる。

 試みに、自分にもなじみの深い1995年を見てみる。「政治・経済」の欄を眺め、新食糧法施行もこの年であったか、といったことに気付かされるのと同時に、「社会運動」の欄ではただ単に「女性ユニオン東京結成」だけでなく、その前に「全労協系」とちゃんと記している。よほどの目配りがないとこの記述は抜けるだろう。さらにこの欄には「民社党を支援する労組会議、解散宣言」という項目もある。これだけではさあ大したことのない事件のように思われるけれども、前後の政治の文脈を考えれば大変に象徴的な出来事であったろう。考え抜かれている。

 「生活・思想・文化」の欄がこれまたすごい。『賢治の学校』の創刊や蓮實重彦・山内昌之編『文明の衝突か、共存か』に触れ、さらに「imago」臨時増刊、中沢新一責任編集「オウム真理教の深層」まで取り上げる。もちろん加藤典洋『敗戦後論』(初出は95年1月の「群像」)や高橋哲哉『記憶のエチカ』はいわずもがな。実にイメージが膨らむ年表。

 年表作成者をみて納得した。道場親信さんである。「職人技」というと失礼になるだろうか? 「余技」でも「付録」でもない、「プロ」の仕事を見せつけられて実に心地がよい。続刊の年表が待ち遠しい。
 
 
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by todoroki-tetsu | 2009-02-01 22:01 | 業界 | Comments(0)