カテゴリ:業界( 88 )

要チェック!『レーニン 最後の模索』

 期待と不安とがないまぜな状態で待っていた新刊、それが『レーニン 最後の模索』である。

 期待。僕がレーニン好きだから。全集も十巻選集も持っている。「遠方からの手紙」あたりからの怒涛の半年は何度読み返しても興奮する。あれこれ言われるけれども、やっぱりあれだけのことをなした人だ、批判であってちろんいい、もっとしっかり見直さなきゃいけないんじゃないか、と思う。
 
 不安。そうはいってもレーニンである。今さら感が漂うのではないか。

 ということで、まあ、配本の様子を見よう、と思っていた。

 もうそろそろ発売のはずだが、と思って版元さんに問い合わせてみたら、パターン配本は一切せず、指定配本のみだったとのこと。うわあ、こりゃあまずいや、とあわてて発注。

 ちょっとでも気になったら、すぐに確認しておかなきゃいけないなあ、と反省。もう入荷している書店もきっとあるだろう。そういう書店はちゃんとしたところだ。プロとして恥ずかしい。

 しっかり展示してなんとか挽回したいものだ。

 
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by todoroki-tetsu | 2009-04-22 00:13 | 業界 | Comments(0)

書物復権の目玉は……

 例年のことではあるが、結構好きなのが書物復権。「え、これ切れてたの?」と思うようなものも少なくない。学生時代に読んでいたり見知っていたりしたものでもう入手が難しいものが結構あるんだなあ、ということを逆に実感したりする。

 なんといってももうれしいのは、岩波書店の『社会思想史概論』。高島善哉、水田洋、平田清明という豪華絢爛メンバーによる名著である。「社会思想」という言葉が聞かれなくなって久しい昨今、再読の価値は十二分にある。昔懐かしいと思うお客様にだけでなく、いかに新しいお客様に届けるか……難しいが、チャレンジしたい。
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by todoroki-tetsu | 2009-04-20 20:49 | 業界 | Comments(0)

「朝日ジャーナル」は絶好調

 浅尾大輔さん増山麗奈さん双風舎さん澤田サンダーさん、などなど、もういろんな方があちこちで紹介していらっしゃるけれども。

 実に多彩な皆様が寄稿されていて、実に面白い。雑誌売り場でも好調だったが、面白そうなので自分の棚でも置いてみたところ、二日ではけてしまった。やばい。月曜朝一で手配せねば。

 どんな本でもお客様が買って下さるのはうれしいし、ありがたいけれども、こういう本が売れるのって、何かこう、ちょっと違ったうれしさがある。
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by todoroki-tetsu | 2009-04-18 23:58 | 業界 | Comments(0)

廣瀬純×コレクティボ・シトゥアシオネス『闘争のアサンブレア』読了

 年度末からなにかとバタバタしてあげくのはてにこんなに更新が滞ってしまった。この御時世、忙しいということはありがたいことだと思わねばならん……とも思わないのだが、あまり深く考えないことにする。失業が怖くてあくせくしているだけなのかもしれない。よく分からない、とヴェイユを読み返したくなる今日この頃。えらく初速がいいな、とちょっとうれしくなって思わず読了したのが『闘争のアサンブレア』。帯にある惹句、「ハローワークか、アサンブレアか。」が実にいい。

 アルゼンチンのことなど予備知識も何もない。しかも、ここで収録されている内容のほとんどが、2003年のものだという。うわ、こりゃ失敗したか、と思いきや、ぐいぐいと引き込まれてしまった。

 読み終えた後も、結局のところディティールはよく分からないままである。それはひとえに僕の読み方の問題であって本のせいではない。でも、実にスリリングである。なんだか知らないけど、すごく大事で、えらいこと勉強になるぞこれは、という感触だけが、ある。
 
 運動の形態は多様にあるし、国家や時々の権力との関係も極めて複雑。でもそれらを見据えてなお、「自律」をこよなく大切にする姿勢。湯浅さんがしばしば強調される「市民社会」のイメージともどこか違うのだろけれども、でも重なる部分は少なくない気がする。

 僕は順番に最初から読んでいったが、予備知識のない方は末尾にある廣瀬さんの解説「ブエノス・アイレス報告」から読まれた方が入りやすいかもしれない。『フランス ジュネスの反乱』などと並び、すくなくともこの5年の間、日本の社会運動の格好の参考書となるだろう。
 
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by todoroki-tetsu | 2009-04-17 23:31 | 業界 | Comments(0)

読みたい本が立て続けに出る

 なるべくここに本のことを記すときには、ちゃんと自分で読んでからと思っていたのだけれども、この間何とかあれこれ読んではいてもまとめる時間が取れないでいる。『読書は1冊のノ-トにまとめなさい』、実践するのは難しいなあ。

 とはいえ、書店員をやっていて、新刊の現物をこの目で見て手に取り、思わず「こ、これは!」と興奮してしまう本というのはやはりある。読んでからなんていっていてはいつになるか分からないので、とりあえずこの2点だけはまずもってプッシュしておきたい。

 ひとつめは、ジョン・ホロウェイさんの『権力を取らずに世界を変える』。昨年のG8対抗国際フォーラムでお話を伺って以来、興味津々だったのだ。いろんな応答が想像されるのだけれども、盛り上がってほしいし、盛り上げていきたい。

 ふたつめは、赤木智弘さんの『「当たり前」をひっぱたく』。『若者を見殺しにする国』に続き、白を基調とした装丁。書店員という稼業は表紙で勘を働かせるクセがおのずと身に付いてくるものだが、赤木さんの単行本は白がしっくりくるな、と思う。第二作目の単行本の売行きはいろんな意味で重要。しっかりアピールしよう。 
 
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by todoroki-tetsu | 2009-03-21 05:42 | 業界 | Comments(0)

「週刊ダイヤモンド」&「週刊東洋経済」(いずれも2009年2/7号)

 次号発売前夜に記すのもなんだが、2/2発売の「週刊ダイヤモンド」&「週刊東洋経済」はじつに面白かった。

 「週刊ダイヤモンド」は「ハケン共存かVS正社員対立か」、「週刊東洋経済」は「雇用壊滅!」といずれもこの間の雇用・貧困問題について特集を組んでいる。

 この号に限らずだが、「週刊ダイヤモンド」は湯浅誠さんや雨宮処凛さん、赤木智弘さんといった論客を集めていて、多彩さで軍配があがる。「ダイヤ」にこうした方々が出る、ということの社会的な意義は決して小さくないと思う。原稿料事情を僕は全く知らないが、こういうメジャーどころで少しでもちゃんと稼いで頂けるといいなあ、などとも考える。まあ、そのためには現場でちゃんとお客様に買って頂けるようにアピールしなきゃいけないのだが。

 かわって「週刊東洋経済」。取材力の強さ、目配りの幅広さと深さを感じる。「ハウジングプア」という表現を前面に出し、母子生活支援施設にまで踏み込んでいるあたりは『フリーターズフリーVOL.2』での極めて高度な到達を髣髴とさせる。また、派遣村での湯浅さんと連合高木会長との対面のクローズアップの仕方など、かゆい所に手が届くというか、実に行き届いていて、読んでいて何度も唸った。

 特集作成チームの筆頭に、『雇用融解』の風間直樹さんのお名前を拝見し、なるほどと得心した。もちろん集団作業の賜物であることは間違いないわけだが、いや、素晴らしい特集だと思う。

 バックナンバーは取り揃えていなくても、すぐ前の号は置いている書店はわりあいにあるので、お見逃しの方はぜひ。
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by todoroki-tetsu | 2009-02-09 00:23 | 業界 | Comments(3)

年表の迫力。『戦後日本スタディーズ③』

 今どき講座ものでもあるまいし、という感が率直なところないでもない。全三巻だという。まあ、確かに資料的価値はあるのだろうな、と思いつつ、しかし編者が多すぎてちょっと不安。こうしたことは編者が少ない方がスムーズにいくのではないかな、などといらぬ心配をしてしまう。『戦後日本スタディーズ』である。

 「80・90年代」の第三巻から「70・60年代」「50・40年代」へとさかのぼっていくのだそうだ。こうした戦後史の試みそのものは嫌いではない。『「豊かな社会」日本の構造』を学生時代に紐解いたはしくれとして、やはり戦後日本というものがいったい何なのか、という問いかけなしには現在が見えてこないという認識は、ある。どんな風にさかのぼっていくのか、大変に興味深い。

 「80・90年代」に収められた論考の中で面白かったのは辻井喬さんへのインタビューである(上野千鶴子さんと小森陽一さんによる)。吉本隆明さんもしばしば辻井さんに言及しておられたけれども、やはりこの人は面白い。

 だが、なんといってもすごいのは年表である。巻末にこの20年の年表が収められているのだが、38ページにもわたる大部なもの。「政治・経済」「社会運動」「生活・思想・文化」の三分野に分かれているのだが、この充実ぶりは何物にも代えがたい。これだけで¥2,520円のモトは取れる。

 試みに、自分にもなじみの深い1995年を見てみる。「政治・経済」の欄を眺め、新食糧法施行もこの年であったか、といったことに気付かされるのと同時に、「社会運動」の欄ではただ単に「女性ユニオン東京結成」だけでなく、その前に「全労協系」とちゃんと記している。よほどの目配りがないとこの記述は抜けるだろう。さらにこの欄には「民社党を支援する労組会議、解散宣言」という項目もある。これだけではさあ大したことのない事件のように思われるけれども、前後の政治の文脈を考えれば大変に象徴的な出来事であったろう。考え抜かれている。

 「生活・思想・文化」の欄がこれまたすごい。『賢治の学校』の創刊や蓮實重彦・山内昌之編『文明の衝突か、共存か』に触れ、さらに「imago」臨時増刊、中沢新一責任編集「オウム真理教の深層」まで取り上げる。もちろん加藤典洋『敗戦後論』(初出は95年1月の「群像」)や高橋哲哉『記憶のエチカ』はいわずもがな。実にイメージが膨らむ年表。

 年表作成者をみて納得した。道場親信さんである。「職人技」というと失礼になるだろうか? 「余技」でも「付録」でもない、「プロ」の仕事を見せつけられて実に心地がよい。続刊の年表が待ち遠しい。
 
 
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by todoroki-tetsu | 2009-02-01 22:01 | 業界 | Comments(0)

本山美彦×萱野稔人『金融危機の資本論』

いわゆる金融恐慌ものが書店店頭ではにぎやかで、『世界金融危機』はまだ売れ続けているし、ガルブレイスも『大暴落1929』と『バブルの物語』によってはやくも「復権」した感がある。これらと並列していいのかは分からないが、中谷巌さんの『資本主義はなぜ自壊したのか』も一時品切れを起こしてしまった。

 この機会に経済の話とか政策の話とか国家の話とか、そんなところが盛り上がればいいな、と思いつつ、しかしじゃあどうやって生活していくか、ということを考えるとすると節約くらいしかとりあえずは思いつかない。なんかこう、自分自身の身のまわりのことと、大きな話がうまいぐあいに接続されればよい、と思う。どっちが主でどっちが従というんじゃなくて。
 
 学術書も読み物も大変に増えたが、格好の見取り図を示しているのは本山美彦さんと萱野稔人さんの対談『金融危機の資本論』だろう。ある地方銀行に勤めている先輩の話を思い出した。彼が就職したのは確か1996年なのだが、勤めはじめて数年後にお会いした時に「就職してからお金を貸すほうじゃなくて回収ばっかり」と言っていたのを思い出す。部署が違うとかそういうことじゃなくて、銀行本来の仕事が出来ていない、という意味合いだったと思う。

 銀行の役割とは? みたいな話はそれはそれでいろいろあるんだろうけれども、なぜ、今のようになったのか、について本山さんが大変分かりやすく語って下さっていて、そこに萱野さんの国家論というか権力論の知見が組み合わさり、大変に面白い。

 P.147~P.150、「金融は国家から独立したものなのか?」と小見出しのついた対話がある。白眉であろう。「市場」と「国家」について、またそれらをこの間の経済学や人文学はどう捉え(そこなって)きたか、についての真摯な問いかけがある。「論争よ、おこれ」と声を大にして言いたい。そうすれば本が売れる、という商人としての勘定はもちろん、ある。が、同時にそれで様々な問題が議論され、深まっていけばこんないいことはない、とも思う。

 今起こっていることは何なんだろう? という思いに真正面から答えてくれる好著。
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by todoroki-tetsu | 2009-01-19 22:44 | 業界 | Comments(0)

山上たつひこ『光る風』

 噂には聞いていた。ちくま文庫に入った時にちゃんと手に入れておけばよかったのだが、気付いた時にはあえなく版切れていた。

 10代末期、『がきデカ』にはまった。漫画で笑うことはもちろんいっぱいあったはずだが、文字どおり腹を抱えて笑ったのはこれが最初だった気がする。

 昔はシリアスな作品を書いていた、とは当時から母親から聞いてはいた(うちの母親はいまだに虫プロが出していた「COM」を全巻大事に取っている)。が、山上たつひこさん=ギャグ、の印象が強烈過ぎ、さかのぼる気になったのはもっとずっと後のことである。で、気づいた時にはもう版切れ、と、まあ、そういう次第であった。

 『光る風』復刊を知ったのも、出てからしばらくしてからであったし、実際に読んだのはつい最近。

 いや、すごい。1970年に「週刊少年マガジン」に連載されていたという。時代は安保一色だったのかどうかは分からないが、しかし、それなりに「政治の季節」ではあったのだろう。サスペンスとしても読めるし、痛烈な社会批判とも読める。なにより、面白くてやめられないのである。連載漫画の「ワクワク」――木村俊介「漫画評論では分からないもの」(「小説トリッパー」2008年秋号)に教わった概念――とはこういうものなんだな、と思う。

 一番びっくりしたのは堀田という存在。色んな人にワクワクして欲しいと思うので、詳細は書かない。サワリだけ。

 「なるほど きみや社会主義者からみれば/おれたちのいう社会的平等も/きみたちのいう社会的平等も/どこに かわりがあるのかと思うだろう/だが――ちがうんだ/理屈としてはそうであっても/ちがう!/きみたちのように“正常”な人間として生まれ/“正常”な環境でそだった人間と/おれたちのように奇形人としてこの世に生まれてきたものとでは/平等ということばの感覚そのものがちがうんだよ」(P.270-271)

 これに続く彼の肉声に僕は衝撃を受ける。オビにある「“明日の日本”を予見した衝撃のポリティカル・フィクション」の惹句は伊達ではなかった。
 
 息長く売っていきたい一冊である。
 
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by todoroki-tetsu | 2009-01-12 11:23 | 業界 | Comments(0)

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

 「文化系トークラジオLife」にて斎藤哲也さんがすでに推されていて、いやあさすがプロは目が早いなあ、と思いつつ、遅ればせながら読了。西原さんの『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

 さすが理論社さん、この道のパイオニアだけあってすごいところをひっぱってくる。何気なく帯に記された刊行予定を見ると、立岩真也さんの名前がある。前にも見かけた気がするので、ずっと進行中なのだろう。じっくりと時間をかけて形にしていってほしいものだ。

 さて、学生時代に『ぼくんち』で衝撃を受けて以来の西原ファン、全部とまではいかずとも『サイバラ茸』シリーズ含め、ある程度読んでいるつもりではいた。けれども、いや、西原さんの「核」というか、吉本隆明さんの芸術言語論的に言えば「精神構造」が凝縮されていて、新鮮に思えた。

 カネの話を中心に据え、働くことについて、また貧困について話は及んでいく。湯浅誠さんのおっしゃる「溜め」の話にも関わってきそうだ。グラミン銀行へのまなざしもあたたかい。

 名作短編、「うつくしいのはら」(『営業ものがたり』所収)を思い出しつつ、目頭が熱くなった。
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by todoroki-tetsu | 2009-01-07 09:44 | 業界 | Comments(0)