『吉本隆明の声と言葉。』を読み聞き終える

  『吉本隆明の声と言葉。』を読みつつ聞き終える。

 断片をつなげているだけか? と思っていたらこれが不思議とよく耳に入る。こんなたどたどしい話し方をする人なのか、と思いながらも引き込まれていく。吉本さんへの印象が随分身近になった。博識なのは間違いないし、激しい人なんだろうなとも思うが、基本的には横丁のご隠居な感じだな、と。昔のことは知らない。このCDを聞きながら冒頭の糸井さんとの対談を読むと、そんな印象。

 僕がこのCDBOOKで特にいいな、と思ったのは、2箇所。

 ひとつは、CDのトラック17、1979年講演の「シモーヌ・ヴェーユの意味」から抜粋された一節。この部分は他のトラックに比べておっそろしく迫力がある。僕がヴェイユ好きであるからかもしれないが、ヴェイユのここを抜き出してこう語ったのか! という新鮮な驚き。字面でおっていけばそりゃそうだよな、とも思うのだけれども、これが語られる迫力といったらない。これはぜひ全編を聞いてみたい。

 もうひとつは、冒頭に収められた対談の一部分。P.44-45に、吉本さんが聞かれて答えられなかった問いについて語っている箇所。吉本さんの声を聞いた後でこの部分を読むと、その息遣いまで感じられて、胸に迫るものがある。こういうことを考えている人が少しでも増えれば、世の中少しは違ってくるかもな、と思う。引用はしない。ぜひ実際に読んでいただければと思う。

 それにしても、糸井重里さんのこの編集・構成力。たぶんこんなことを出来る人は後にも先にもこの方だけでしょうね。吉本さんがあとがきに「何だか世界じゅう総崩れみたいに思える現在の情況を重くもなく、軽くもない足どりで歩いている人がここにいるという感じだろうか。」と糸井さんを評しておられる。

 このお二人の関係性が垣間見られる、微笑ましい評と感じた。
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by todoroki-tetsu | 2008-07-19 22:53 | 業界 | Comments(0)

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