小泉信三展

 もう会期は終了してしまったのだが、小泉信三展、面白かったので少し。

 密度の濃い展示だったと思う。僕は慶應に何のゆかりもないが、福沢諭吉直筆、「小泉信吉君を弔す」(掛け軸)などは、福沢の思いがタチ現れてくるようでいい。

 福田徳三の講義を聴講した際のノートなども面白い。どんな講義だったのかは分からないが、この時代の人はとにかく幅広くみっちりと勉強したのだろうな、などと想像する。

 留学時代のノートに、ウェッブやバーナード・ショーについて記されている。すごい時代にすごい場にいたんだな、と思う。

 印象的だった手紙がある。小泉の岩波茂雄宛て書簡である。教え子ではあるが立場を異にすることとなった、野呂栄太郎に関するものなのだが、野呂が岩波から出す予定の翻訳が遅れていることを心苦しく思った小泉が、岩波茂雄に野呂の前借分の印税を返す旨認めたもの。

 師弟愛というとありきたりなのだろうが、こういうところに互いの交流の密度がしのばれる。

 その後二人がどういう関係であったのか、よく知らない。が、立場の違いはそれとしてあって、その上で交流しあう姿というのは、当たり前だが得がたいものだと思う。

 「雑誌ブーム」(といっても雑誌コードの無い書籍扱いなのだが……、という流通上のツッコミはともかく)で論壇が活気付いているように思える昨今、個人的な好き嫌いやゴシップに躓くことなく、真摯な議論が積み重ねられていくことをあらためて願ったり、した。



 
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by todoroki-tetsu | 2008-05-23 04:24 | 業界 | Comments(0)

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