中島岳志「日本右翼再考」(『思想地図』)

 ずいぶんと間が空いてしまったが、『思想地図』で気になっていた論文のひとつ、中島岳志さんの「日本右翼再考」について。

 20ページ程度の小論だが、「右翼」をきちんと考えようとする際の格好の手がかりとなっている。基本的には「右翼」の歴史・思想をコンパクトにまとめたという構成だが、

 「右翼思想の空洞化が深刻化する中で、社会の右傾化が進むという現象は、やはり危険な潮流なのではないだろうか。今こそ、政治的イデオロギーを超えて、『思想としての右翼』を批評する必要がある」(p.85)

 という一文で締めくくっておられるとおり、単なるレビューではなく、現在の「日本」への問題意識に裏打ちされたまとめ方になっている。知っている人には知っていることばかりなのかもしれないが、「右翼」思想の持つ奥行きに僕は教えられるところが多かった。

 例によって(?)橋川文三をよく引いておられるが――『ナショナリズム』への書評も素晴らしい――、面白いことに、間もなく発売予定の雑誌「ロスジェネ」に杉田俊介さんが寄せられた論考にも橋川への言及がある。また、同誌では、萱野稔人さんがご自身の考え方を振り返りながら「左翼」/「右翼」について論じておられる。

 どちらかというと何だかおどろおどろしいような印象を受ける「右翼」/「左翼」の話。今までの語られ方とは違ったやり方が出てきているのかもしれない。従来の議論を踏襲しつつ、新しい形に発展していけば面白い。積極的というか建設的な議論こそ、本屋としても商機。注意深くアンテナを張り巡らしておきたい。
 
[PR]

by todoroki-tetsu | 2008-05-14 15:25 | 業界 | Comments(0)

<< ふたたび、『蟹工船』 棚整理 >>