吉本隆明×糸井重里「テレビと落とし穴と未来と。」

 年をまたいでしまうが、どうしても気になるし、分からないところもふくめてすごいや、と思ったので。年末の「ほぼ日」で連載していた、「テレビと落とし穴と未来と。」のこと。

 「05:価値、無価値、反価値」では、糸井さんが出版界の状況について触れておられる。 「フリーターズフリー VOL.2」のアスランとフリターズフリーのみなさんとの座談会「協同労働と書籍流通のオルタナティブのために」、あるいは「ロスジェネ 第2号」での大澤信亮さんのエッセー「ロスジェネ的オルタナティブ市場構想」などが連想され、さあ、さて書店員としてはどう考えればいいのか、と考えさせられる。
 
 仕入正味の問題とか、送料負担の問題とか、返品の問題とか、色々とあるわけで、それらはそれらとして色々考えなければならないのかもしれない。それはそれとして、でも、要するにもっと売っていかなきゃ始まんないんじゃないか、という思いもあって、糸井さんが「新しい価値を生み出さなきゃならないし、そのお客さんを作っておかなきゃならない」とおっしゃっていることに共感もし、また、ずいぶんと難しいことだぞこれは、と思った次第。

 続いて、「06:文化はいいことだ、の落とし穴」 。「ふつうの『タダ』じゃダメなんですよ」という吉本さんの言葉もすごいが、ずしんときたのはここでも糸井さんの言葉。

 「雑誌もテレビも、原材料費を安くして
 どうやって広告を取れるように完成させていくかが
 目標になっているところが
 いまはあると思います。
 それがこの先、どうなっていくかというと、
 それこそ、30人でも
 人を集められる力がちゃんとあるかどうか、
 というようなことが、
 重要になっていくとぼくは思います。」


 企業宣伝の一環としての出版と、それに適合するような形で書店の棚を提供するようなビジネスモデルというのは以前からあったが、最近はとみに増えてきた。それで売上が確保できるなら、という反面、結果どう展開したところで関係者しか買っていかないような本というのも少なくない(もちろん、こうした展開がきっかけで一般に広がっていく本というのもないわけではない)。いきおい広告ビジネスと書店との関係について考えざるをえないので、大変にかみしめた言葉である。

 糸井さんがここでおっしゃっていることで実にリアルなのは、「30人」という数。肩書きや仕事のしがらみなく、本当に30人集められたら、これは相当にすごいことだと思う。サイン会やイベントなんかもやったりするから、こうした数の感覚は自分なりにある程度イメージできる。

 いずれも自分の関心にひきつけすぎているだけなんだろうと思うが、何か手掛かりがこのお二人の言葉のやりとりの中にあるような気がしてならない。

 もっとも少ない文字数で、もっとも多くのことを考えさせられる言葉を発することの出来る稀有のお二人。1/4のNHK教育が楽しみである。
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by todoroki-tetsu | 2009-01-01 17:00 | 運動系 | Comments(0)

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